【連載最終回(全6回)】ネットワーク運用の未来を拓く「AIOps」自律型ネットワークへの最終ステップ

エンジニアblog

前回は、Active Assuranceを活用したネットワーク品質の継続的な検証についてご紹介しました。最終回となる今回は、Routing Directorの「AIOps」機能を取り上げます。

AIOpsは、これまで各機能で収集・蓄積してきた運用データをAIや機械学習で分析し、運用者の判断を支援する仕組みです。障害が発生してから対応する「受け身」の運用から、問題の兆候を捉えて先回りする運用へ。さらにその先にある自律型ネットワークの実現に向けた基盤として位置付けられています。

本記事では、Routing DirectorAIOpsがどのように運用を支援し、ネットワーク管理の効率化につながるのかをご紹介します。

なぜ今、ネットワークにAIOpsが必要なのか?

現在のネットワークは、年々規模と複雑さを増しています
IoT
デバイスの増加、クラウドネイティブなアプリケーションの普及、そして5Gの本格展開により、ネットワーク上で扱われるデータ量は爆発的に増えました。
同時に、トラフィックの振る舞いや障害要因も複雑化しています。
こうした状況の中で、すべての事象を人の手で監視・分析し、適切な判断を下すことには限界が見え始めています。

従来の運用では、次のような課題が発生しがちです。

  • 膨大なアラートの中から重要な事象を見極めるのが難しい
  • 障害原因の特定に時間がかかる
  • 問題が発生してから対応する運用になりやすい
  • 経験豊富なエンジニアへの依存が大きい

特に近年の障害は、単一の機器ではなく複数のシステムやサービスが関係するケースが増えています。調査範囲も広がり、原因の切り分けや復旧に時間を要することが少なくありません。

AIOpsはこうした課題に対し、蓄積された運用データを横断的に分析し、状況把握や原因調査を支援します。

Routing Directorでは、テレメトリデータ、イベント、ログ、設定情報、SLAデータなどを統合的に収集し、その情報をAIが分析します。運用者は分析結果を活用しながら、より迅速な判断と対応を行えるようになります。

自然言語インターフェースとAIチャットボットによる運用サポート

Routing DirectorのAIOps機能の特長の一つが、自然言語で利用できるLLM Connectorと呼ばれるAIアシスタント機能です。

従来は複数のダッシュボードや監視ツールを確認しながら情報を集める必要がありましたが、LLM Connectorを利用することで対話形式で必要な情報を取得できます。

例えば、次のような質問が可能です。

  • 「東京データセンターのトラフィック状況を教えて」
  • 「昨日発生した障害の原因は何だったか」
  • 「特定アプリケーションの応答性能が低下している理由を調べて」

LLM Connectorは、ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデル(LLM)とAPI連携し、事前に定義されたFunction Callingを利用してRouting Directorの運用データを取得します。取得したネットワーク状態や関連情報をAIが分析し、その結果を自然言語で回答します。

画面操作やCLIコマンドに慣れていない担当者でも必要な情報へアクセスしやすくなるため、初動対応や状況確認の効率化が期待できます。

AIが運用者に代わって判断・操作するわけではありませんが、調査の入口となる情報を素早く提示してくれる点は実運用でも大きな助けになります。

Routing Directorでは、このようなLLM Connectorによる運用支援に加え、近年普及が進む生成AIとの連携も視野に入れています。外部AIと連携することで、ネットワーク運用データを活用した分析や問い合わせ対応など、さらに幅広い運用支援が期待できます。

MCPサーバを使った外部AIエージェント連携

最近ではCodexClaude CodeをはじめとするAIエージェントを業務で活用する企業も増えてきました。
Routing Director
では、LLM Connectorに加え、こうした外部AIエージェントとも連携できます。
その仕組みとして提供されているのがMCPModel Context Protocol)サーバです。

MCPは、AIと外部システムを接続するための標準的な連携方式です。
従来、AIが外部システムと連携するためには、接続先ごとに個別のAPI連携の開発・保守が必要でした。
MCP(Model Context Protocol)は、この課題を解決するための標準化されたプロトコルです。
MCPサーバは、AIと外部システムの間を仲介する役割を担います。AIは接続先のシステムごとのAPI仕様を気にすることなく、統一されたインターフェースを通じてデータの取得や操作を行えます。

  • ネットワーク全体を把握した分析
    AIエージェントはMCPを介してトポロジ情報、アラート、テレメトリ、設定情報、SLAデータなどを取得できます。個別のログやアラートだけではなく、ネットワーク全体の文脈を踏まえた分析が可能になります。
  • トラブルシューティングの自動支援
    Routing Directorから収集した情報をもとに影響範囲の特定や原因候補の提示を行えます。例えば、「特定拠点で遅延が発生している理由」や「SLA逸脱の要因」をAIが調査し、調査結果をまとめ、次のアクションを取ることができます。
  • 既存のAI基盤・業務フローとの統合
    MCPはオープンな仕様のため、社内で利用しているAI基盤やIT運用システムとも連携できます。ネットワーク運用だけで完結するのではなく、サービスデスクやITSM、運用自動化基盤と組み合わせることで、より広範囲な自動化も視野に入ります。

このように MCPサーバを活用することで、Routing Director は単独のネットワーク運用ツールにとどまらず、AIエージェントと連携するインテリジェントな運用基盤へと進化します。
人がすべてを判断・対応するのではなく、AIと協調しながら運用する。そのための鍵となるのが、この MCPサーバです。

例:MCPサーバを使ってAIエージェント(Google Antigravity)からRouting Directorに対して問い合わせた際の表示

まとめ

全6回にわたり、Juniper Routing Directorの各機能をご紹介してきました。

  • 第1回:Routing Director概要
  • 第2回:Device Management
  • 第3回:Observability
  • 第4回:Trust
  • 第5回:Active Assurance
  • 第6回:AIOps

Routing Directorは現時点で完全自律型のネットワーク運用を実現しているわけではありません。しかし、Trustによる持続的なデバイスコンプライアンスのチェック、Observabilityによるネットワーク全体のデータ収集と可視化、Active Assuranceによる品質検証、そしてAIOpsによる分析支援といった要素が揃い始めています。

これらを組み合わせることで、ネットワーク運用は「監視する」「調査する」といった作業中心の運用から、「予測する」「未然に防ぐ」「自己修復」を行う運用へと変わっていきます。

私自身、ネットワーク運用の現場では「原因を探す時間」が最も長いと感じることがあります。AIOpsは、その時間を短縮し、運用者が本来取り組むべき改善や最適化に時間を使うための仕組みだと考えています。

ネットワークの複雑化や運用負荷の増大に課題を感じている場合は、ぜひRouting Directorの活用を検討してみてください。自律型ネットワークに向けた第一歩として、有力な選択肢の一つになるはずです。

関連記事

Juniper導入実績多数のスペシャリストが
最新情報をみなさまにお届けしています

Juniper社認定資格者