【連載第3回(全6回)】見えない問題を見つけ出す!「Observability」機能でネットワークの真の姿を掴む

エンジニアblog

前回は、ネットワーク運用の基盤となる「Device Management(デバイス管理)」について解説しました。デバイスのライフサイクル管理を自動化し、土台を強固にした次に求められるのは、「ネットワークの現状をいかに正確に把握するか」という点です。

第3回となる今回は、Routing Directorの核心的な機能の一つである「Observability(オブザーバビリティ:可観測性)」に焦点を当てます。

従来の「監視」という枠組みを超え、ネットワークの深部で何が起きているのかを鮮明に描き出すことで、トラブルへの対応だけでなく「予兆の検知」までも可能にする次世代の管理手法について、その技術的価値を掘り下げます。

従来の「ネットワーク監視」における限界

多くの運用現場では、SNMPやPing、Syslogを用いた監視が長年行われてきました。これらは極めて重要な基本要素ですが、ネットワークの複雑化に伴い、以下のような課題に直面するケースが増えています。

  • サイレント障害への対応: 監視ダッシュボード上では正常(グリーン)を示しているにもかかわらず、ユーザーからは「通信が遅い」といった申告が寄せられるケースです。従来の監視では、設定されたしきい値に達しない微細な異常を捉えきれないことがあります。
  • アラートの氾濫と根本原因の埋没: 障害発生時に大量の通知が送出され、真に解決すべき「根本原因」の特定に多大な時間を要してしまいます。
  • 事後対応型の運用: 障害が発生してから調査を開始する「リアクティブ(事後)」な運用に留まってしまい、ビジネスに影響が出る前に手を打つことが困難です。

これらの課題は、あらかじめ定義された事象のみを追う「監視(Monitoring)」の限界とも言えます。これに対し、未知の事象や複雑な因果関係を解明しようとするアプローチが「可観測性(Observability)」です。



Routing Directorが実現する「Observability」の強み

Routing DirectorにおけるObservabilityは、ネットワークから出力される膨大なデータ(テレメトリ、ログ、構成情報)をリアルタイムに集約・分析することで、ネットワークの「健康状態」を多角的に可視化します。

具体的には、以下の3つの技術的アプローチによって、運用のあり方を変革します。



1.テレメトリによる高精度な可視化

従来のSNMPポーリングは数分間隔の「点」の観測に留まり、その間に発生した突発的なスパイクやバースト(瞬間的な負荷)を見逃すリスクが潜在していました。 Routing Directorは、デバイス側から能動的にデータを送信するストリーミングテレメトリを採用することで、この課題を解決します。

  • 高精細な変動の捕捉: 10秒単位という粒度でデータを収集。帯域利用率や遅延の推移を捉えることで、従来の運用ツールでは観測できない短期の問題を可視化します。
  • ルーティング動態の完全記録: 従来の定期監視では捕捉が困難だったBGP等の経路アップデートや、一瞬のフラッピング(経路の不安定な切り替わり)もログとして漏らさず記録。トラブル発生時の「原因究明の難易度」を劇的に下げることが可能です。

タイムラインで経路数の変動や更新(Add,Delete)された経路の具体的な経路情報を確認することが可能

2. AI/MLを活用したインテリジェントな分析


収集された膨大なデータから価値ある情報を抽出するため、Routing DirectorはAI/ML(機械学習)を用いた相関分析を実行します。
障害が発生した際に膨大なログやステータス情報を基に原因究明・分析を行います。
熟練のエンジニアによるトラブルシューティングが必要だった原因分析をAI/MLの力で解決します。

  • 根本原因分析 (RCA): 複数のデバイスで発生した一連のアラートを関連付け、「何が原因で、どこに波及しているのか」を自動的に導き出します。これにより、トラブルシューティングの時間は劇的に短縮されます。
  • アノマリー(異常)検知: 明確なしきい値を超えていなくても、「平常時のトラフィックパターンと比較して挙動が異なる」といった異常を検知し、大きな障害に発展する前に管理者へ通知します。

3. トポロジーとパスの動的な可視化

ネットワークエンジニアにとって、物理的な接続だけでなく「論理的な通信経路」の把握は現在状況を把握するために不可欠です。
障害が発生した際、頭の中でルーティングテーブルを組み合わせて「マップ」を描くのは、神経を削る作業です。
直感的なネットワークの可視化によってエンジニアの負担を劇的に解消します。
Segment RoutingやMPLSで構成されたネットワークを可視化することで運用を負担を軽減します。

  • パスの可視化: マップ上で実際のトラフィックがどの装置を通り、どの区間で通信が多く流れているのかを視覚的に表現します。
  • パスのステータス表示: 該当のパスを通るトラフィックの遅延や実際に流れているリアルタイム通信量をグラフで表示できます。

複雑なネットワーク構成を直感的に把握。トラブルの影響範囲も即座に特定可能です。

4. まとめ:信頼性の高いネットワーク運用の実現に向けて

今回は、Juniper Routing Directorの「Observability機能」について解説しました。
単に「動いているか」を確認するだけの運用から、ネットワークの内部状態を深く理解し、先回りして課題を解決する「プロアクティブ(能動的)」な運用へ。Routing Directorは、運用の負荷を軽減するだけでなく、ITインフラとしての信頼性を一段上のレベルへと引き上げます。
障害対応の迅速化や、パフォーマンス低下の解消に課題をお持ちの企業様にとって、この「可視化の力」は強力なソリューションとなります。


導入イメージについてもっと詳しく知りたい、といったご要望がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。貴社の状況に合わせた最適なソリューションをご提案し、デモンストレーションやPoCを通じて、Routing Directorがもたらす具体的な効果を実感していただくことも可能です。


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