
【連載第1回(全6回)】ネットワーク運用を革新する「Routing Director」とは?
今日のデジタル時代において、ネットワークは企業活動の根幹を支える重要なインフラです。しかし、ネットワークの規模が拡大し、多様なサービスが展開されるにつれて、その運用はますます複雑化しています。手動での設定変更やトラブルシューティングは時間とコストがかかり、ヒューマンエラーのリスクも高まります。このような課題を解決し、ネットワーク運用のあり方を変革するソリューションが、Juniper Routing Director(ルーティング ダイレクター)です。
1.複雑化するネットワーク運用の課題
- 規模の拡大と複雑性の増加: IoTデバイスの増加、クラウドサービスの普及などにより、ネットワークに接続されるデバイス数やトラフィック量は爆発的に増加。これにより、ネットワーク構成は複雑化し、運用の負荷が増大しています。
- 変化への迅速な対応の要求: 新しいサービスの展開、セキュリティ脅威への対応、トラフィック変動への適応など、ネットワークは常に変化し続けるビジネス要件に迅速に対応する必要があります。
- 人材不足とスキルギャップ: ネットワーク運用には高度な専門知識が求められますが、慢性的な人材不足やスキルギャップが深刻化しており、安定した運用を維持することが困難になっています。
- コストの増加: ネットワークの拡張や運用の複雑化に伴い、設備投資や運用コストが増加の一途をたどっています。

これらの課題は、企業がデジタル変革を推進する上での大きな障壁となり得ます。
持続可能で効率的なネットワーク運用を実現するためには、「自動化」が不可欠です。
しかし、一言で「ネットワーク自動化」と言っても、そのアプローチは多岐にわたります。単一のツールやスクリプトだけでは、真の意味での包括的な自動化は実現できません。
2.Routing Directorとは?
Routing Directorは、ネットワークのライフサイクル全体にわたる自動化、オーケストレーション、最適化を実現します。単なる設定投入ツールではなく、ネットワークの設計から展開、監視、診断、さらには最適化まで、一貫したアプローチで運用をサポートします。
Routing Directorは、複数の強力なコンポーネントで構成されており、それぞれがネットワーク運用の特定の側面に特化しながら、相互に連携して包括的な自動化ソリューションを提供します。主なコンポーネントは以下の通りです。
- Device Management: ネットワークデバイスのライフサイクル管理と設定自動化を効率化します。
- Observability: ネットワーク全体の可視化、パフォーマンス監視、根本原因分析を強化します。
- Trust: ネットワークセキュリティとコンプライアンスを自動化し、信頼性の高い運用を保証します。
- Active Assurance: サービス品質をエンドツーエンドで能動的に検証し、SLA達成を保証します。
- Service Orchestration: VPNサービスをインテントベースでプロビジョニングが可能です。設定後の正常性確認なども自動で行うなどネットワークサービス全体のライフサイクルマネジメントを行います。
- Network Optimize: Web GUIによるインテントベースのパス生成やトラフィックエンジニアリングのポリシーに基づいて自動パス生成、パス可視化を可能にします。
- AIOps: AIと機械学習を活用し、プロアクティブな問題検出、予測分析、最適化、自然言語によるトラブルシューティングを実現します。
- Planner:将来のトラフィック増加やリンク障害、ノード障害などのシミュレーションを行い、最適な設計計画や増強計画を立てることができます。

これらのコンポーネントが連携することで、Routing Directorは、ネットワーク全体の自動化とオーケストレーションを実現します。これにより、以下のような恩恵を得ることができます。
- プロアクティブな運用: 障害発生前に異常を検知し、自動的に修復することで、サービス停止のリスクを最小限に抑えます。
- ビジネスの変化への適応性向上: 新しいサービスやアプリケーションの展開を迅速に行い、市場の変化に柔軟に対応できます。
- 運用の自律性向上: 人手を介する作業を削減し、ネットワークが自律的に運用される「Self-Driving Network」の実現に貢献します。
- TCOの削減: 運用コストの削減、障害によるビジネスインパクトの低減により、TCO(総所有コスト)を大幅に削減できます。
3.Routing Director が実現する「 Self-Driving Network 」
Routing Directorが目指すのは、究極的には「Self-Driving Network」の実現です。これは、人間が介入することなく、ネットワーク自身が状況を判断し、最適な状態を維持するために自律的に動作するネットワークのことです。
例えば、
- トラフィックの急増を検知すると、自動的に帯域を拡張し、新しい経路を確立する。
- セキュリティの脅威を認識すると、自動的にポリシーを更新し、不正アクセスを遮断する。
- デバイスの故障を予測すると、自動的にバックアップデバイスに切り替え、修復プロセスを開始する。
といったことが、Routing Directorが目指す世界です。
もちろん、これは一朝一夕に実現できるものではありませんが、Routing Directorは、このSelf-Driving Networkへの道のりを着実に歩むための基盤を提供します。段階的に自動化を進め、最終的には人間の介入を最小限に抑えた、真に自律的なネットワーク運用へと進化させることが可能です。
4.まとめ
今回はRouting Directorの概要についてご紹介しました。複雑化するネットワーク運用における課題を解決し、自動化を通じて効率性、俊敏性、信頼性を向上させるための強力なプラットフォームであることがお分かりいただけましたでしょうか。
Routing Directorは、単なるツール群ではなく、ネットワーク運用全体のパラダイムシフトを促すソリューションです。これにより、企業はネットワークをビジネス成長のエンジンとして最大限に活用できるようになります。
本記事にご興味を持たれた方、あるいは現在のネットワーク運用に課題を感じていらっしゃる方、ご説明やデモを希望される方は是非一度弊社へお問い合わせください!
次回予告
次回の記事では Routing Directorの各機能に焦点を当て、より深く掘り下げてまいります。それぞれの機能がどのようにネットワーク運用の課題を解決し、どのような価値をもたらすのかを具体的に紹介しますのでご期待ください。関連記事
Juniper導入実績多数のスペシャリストが
最新情報をみなさまにお届けしています
