FX5100事例 株式会社サイバーエージェント様
OpenStackによるデータセンターの構築。その基盤となる運用ネットワークに可用性が高く、サポート体制も信頼できるジュニパーのスイッチを選びました。
- 企業名株式会社サイバーエージェント
- 設立1998年3月18日
- 所在地東京都渋谷区道玄坂一丁目12番1号
- 事業概要メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業
- 取材対象DC Solution Manager, data center management
Senior Network Architect 篠原 雅和 氏(左)
Network Engineer 澤田石 朋彦 氏(右)
株式会社サイバーエージェント(以下、サイバーエージェント)では、OpenStackを全面採用したデータセンターの構築にあたり、ジュニパーネットワークス(以下、ジュニパー)のデータセンタースイッチQFX5100(以下、QFX5100)4台とイーサネットスイッチEX3300(以下、EX3300)30台を採用した。導入の経緯とねらいについてお話を伺った。
エンターテインメント領域へと事業領域を拡大するサイバーエージェント
サイバーエージェントの近況について教えてください。
サイバーエージェントは1998年の創業以来、インターネット領域で事業を拡大し、現在はメディア、広告、ゲームを柱に事業を展開しています。
2015年には、「世界水準で戦えるクリエイティブな会社になる」という意思を込めてコーポレートロゴと「Ameba」のロゴを一新。定額制音楽配信サービス「AWA」のサービスを開始し、続いて動画配信プラットフォーム「AmebaFRESH!」、インターネットテレビ局「Abema TV」を開始する予定となっており、音楽、そして動画というエンターテインメント領域を新たな事業の柱にすることを目指しています。
OpenStack環境を採用したデータセンターにジュニパーのスイッチを採用
QFX5100とEX3300で構築したネットワークの概要を教えてください。
当社では、Ameba事業における新たなサービスインフラとして、OpenStackを全面的に採用した次世代型データセンターを新設しました。新データセンターの規模は、約160ラック、数万コアに及びますが、その管理系ネットワークはQFX5100とEX3300を用いて構築しています。
管理系ネットワークは、ssh(セキュアシェル)でサーバーの制御などのメンテナンスをするためのノードです。メンテナンス性を高めるのと同時に、サーバーやサービス系のネットワークにトラブルが発生した場合でも、保守・運用を確実に継続できるようにサービス系ネットワークとは独立した設計としています。
スイッチの構成は、OpenStackのアベイラビリティゾーンごとに2~ 4台のEX3300をバーチャルシャーシ( 以下、VC)で仮想的にまとめ、2台のQFX5100を1組として2カ所からアップリンクする冗長構成としています。
今回、データセンターを新設した背景を教えてください。
当社のビジネスモデルからすれば、サービスインフラの拡充・拡大は競争力の源泉となります。既存サービスのさらなる充実はもちろんですが、「エンターテインメント領域を新たな事業の柱として確立する」という方針を具現化するためにも、サイバーエージェントならではの先進的なサービスインフラを実現することが、私たちに課せられたミッションの一つでもありました。
OpenStackを採用した理由を教えてください。
OpenStackによる大規模な商用サービス向けのデータセンター構築は、まだ実績が少なく、当初から簡単な挑戦ではないということは分かっていました。しかし、自由自在にスケールアウトできるというインフラ仮想化のメリットは数えきれず、何よりこれまでにない取り組みに挑戦すること自体に大きな意義があると捉えています。
一般的に見ればサービスインフラは手堅く、堅実なテクノロジーで構築・運用されるべきかもしれませんが、他社がまねをすることが難しい、まだ他社が取り組んでいない先進的なテクノロジーを取り入れることが、競争力強化や差別化につながっていくと考えました。
可用性と信頼性、そしてメンテナンス性を要件にスイッチを選定
管理系ネットワークのスイッチを選定する際の要件などがあれば教えてください。
管理系のネットワークにおいては、帯域や先進性などよりも、可用性と信頼性、そしてメンテナンス面が優先されます。ネットワークやサーバーにトラブルが発生した場合、管理系ネットワークも同調して不安定になってしまうようでは、対処のしようがありません。特に今回は、OpenStackという先進的な取り組みにおいて、可用性と信頼性は最も重要視したポイントです。
そもそも管理系ネットワークはその性能やパフォーマンスが直接サービスや機能の向上へと結びつきにくい部分がありますが、OpenStackへの対応により、多くの人的リソースを割く必要があったことを考慮して、できる限りトラブルが少なく手間や時間をかけずに構築・運用したいという思いもありました。
OpenStackとの連携を前提に、実績とサポート体制を高く評価
QFX5100とEX3300を採用した理由を教えてください。
今回の機器選定においては、「OpenStackとの連携」、「統一されたオペレーション」で運用できること、ジュニパー製品に対する「信頼と実績」、そして「サポート体制が充実」しているという点が選定のポイントになりました。最終的には、コストパフォーマンスなどを総合的に判断して採用を決めました。
【選定理由1】OpenStackとの連携VCを用いて、複数の物理スイッチ( EX3300)をOpenStackのアベイラビリティゾーンごとに仮想的な一つのスイッチとして割り当てられるので、構成や運用が複雑にならずに済むという点を評価しました。
【選定理由2】統一されたオペレーション今回導入したQFX5100とEX3300はもちろんですが、他のジュニパー製品も含めJunos®OSによる統一されたオペレーションで管理できる点を評価しました。
【選定理由3】信頼と実績当社でもこれまで数多くのジュニパー製品を利用してきましたが、大きなトラブルが発生したことは一度もありません。加えて、ジュニパー製品は世界中の大手キャリアやサービスプロバイダーで採用されており、信頼と実績という点に関しては申し分ありませんでした。
【選定理由4】サポート体制の充実ジュニパーおよび双日テックイノベーションのサポート体制が充実しているという点もポイントでした。新しい取り組みであるOpenStackとのインテグレーションに関して、いざという時に知識やノウハウを提供してくれる後ろ盾の存在がプロジェクトの成否にも影響しかねません。
双日テックイノベーションは、ジュニパー製品に関する技術力や経験値が高く、当社が困っている時はいつも迅速に対応してくれるので、今回もそのようなサポート体制に期待していました。
VCを活用してネットワークのシンプル化と高密度化を実現
ジュニパーのスイッチを導入した効果などがあれば教えてください。
何よりトラブルがなく安定してネットワークが稼働していることが一番の効果ですが、VCを利用したことでサーバーの構成に合わせたネットワークの高密度化を図ることができました。
同時に各ラックのアップリンクを集約できたので、構成をシンプルにすることができたという効果もでています。導入するスイッチの台数やラックの設置数を最小限に抑えることができましたし、配線作業にかかる時間とコストの削減にもつながりました。
このようなネットワークのシンプル化とJunos®OSによるオペレーションの平準化は、作業の肥大化やミスの予防策となり、運用担当者の属人化を防ぐことにもつながると考えています。
OpenStackという新しい取り組みの中で、苦労したことなどはありましたか。
最初から分かってはいたことですが、現時点でOpenStackのネットワークは「つながらなくて当たり前」だと捉えています。ソースコードを見て読みとくだけの技術力の高さがないと、設計・構築は難しいということをあらためて実感しました。
OpenStackに関しては、比較的シンプルなNova-Networkではなく、より複雑なことができるNeutronを採用したのですが、まだ発展途上な部分もあり、トラブルシューティングは複雑になりがちでした。
このような新しい技術に挑戦する時に、突発的な人的リソースが必要となるトラブルなどに煩わされることがなかったのは、ジュニパー製品を選んで本当に良かったと思います。また、導入した製品に限らず、当社の課題であるOpenStackまで踏み込んで話ができる双日テックイノベーションの存在は、とても頼もしいと感じています。
双日テックイノベーションへの評価と期待
双日テックイノベーションへの評価もお聞かせください。
今回のプロジェクトだけに限りませんが、双日テックイノベーションは提案の段階からレベルが高いサポートをしてくれるので、導入がスムーズでトラブルにつながりにくい環境を実現することができます。技術レベルが高く、検証やトレーニングの施設も充実しているので、本当に頼りになる存在です。
双日テックイノベーションへの期待をお聞かせください。
ジュニパー製品をはじめとしたネットワーク機器に関して、これまでと変わらない丁寧で迅速なサポートを期待しています。
また、OpenStackに関しても、先進の技術サービスセンターNETFrontier Centerに専用の検証ラボ 「OpenStack POC LAB」を開設して、新しいツールやソリューションなどの開発・提供に取り組んでいると聞いています。このような単一のメーカーでは実現が難しい、双日テックイノベーションならではの取り組みにも大いに期待しています。