MPLSのメリットと3つのMPLSケーススタディ

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ネットワークが複雑化する昨今。既存のIGPプロトコルのメトリクスをベースとしたIPルーティングだけでは限界が訪れています。その解決策として「ラベル」を利用した「MPLS(Multi Protocol Label Switching)」という技術が一般的に利用されています。そこでこのコラムでは改めてMPLSを活用するための基本的な紹介知識と導入企業を紹介し、メリットを明らかにしていきます。

MPLSの活用でデータセンターのネットワークを高速化

巨大化・複雑化し続けるデータセンターのネットワーク。膨大なトラフィックが集中するデータセンターでは、一部のネットワーク区間の遅延がネットワーク全体の遅延につながることも想定されることから、そのパフォーマンス改善は喫緊の課題です。

そこで解決策の1つとして注目されているのが、ラベルスイッチング技術である「MPLS」です。従来のIGPプロトコルを使用したネットワークの課題としては下記の2点が挙げられました。1つは、常に最短コースが選択されるため、トラフィックが一部経路に集中しやすいこと。2つめは、IGPプロトコルの場合、障害発生時に計算が複雑化するため遅延につながりやすいこと。

この解決策となるMPLSとは、従来のIPヘッダーの情報に代わり、短い固定長の情報「ラベル」を利用する技術です。MPLSでは、転送処理と経路計算が別々に行えるようになり、従来数秒かかった切り替え速度をミリ秒程度にまで高速化し柔軟な経路選択も実現できるようになります。従来のIPとMPLSの転送方式を比較すると下図のようになります。

MPLS-2

このMPLSを活用することで、データセンターはどのようなことができるのか、下記に整理してみましょう。

(1)IP Routingの拡張

  • End-to-endでの経路制御を考慮。
  • ATMのようなIPのバーチャルサーキットを実現。Lspごとのトンネル技術が使用可能に。
  • ネッーク全体に流れるトラフィックを、効率的に制御・処理するTraffic Engineeringの実現に貢献。
  • Quality of Service (QOS)の実現。

(2)ラベルによるパケット転送技術

  • ラベルはデータリンクレイヤとネットワークレイヤ間に付与。
  • コアルータにおける転送時の負荷軽減を実現。

(3)マルチサービス

  • MPLS-VPNによる、マルチサービスの実現。
  • MPLS網は1つでも、サービスとしてL2VPN/L3VPN等、組み合わせて提供することが可能に。

このように、MPLSは複雑化・巨大化するデータセンターのネットワークの柔軟な経路選択や高速化につながることが以下の事例からも示されています。

MPLS導入で効果を挙げた3つの企業…ケーススタディ

MPLSはすでに多くの企業が活用し、効果を挙げています。どのような価値が得られたのか、3つの事例で見てみましょう。

【事例1】株式会社ミクシィ…「MPLS/VRF」でプロジェクトごとにネットワークを分離

<課題>

SNS「mixi」をはじめ、スマホアプリゲーム「モンスターストライク」で知られる株式会社ミクシィ。積極的に新規サービスを立ち上げるという社風もあり、柔軟にリソースを拡張・縮小できるパブリッククラウドを有効活用。軌道に乗ったサービスは安定稼働を考えてオンプレミスへ移行するという体制を構築。しかし、この運用方法は負荷が高いことが懸念材料。IPアドレス管理とそのアクセス制御が大きな課題となり、今後多数のサービスを展開していくと破綻することも心配されていました。

<MPLSで解決へ>

このような課題を解決するため、「技術的に成熟しており安定的に稼働すること、負荷が小さい使用であること」を条件として、VRF(Virtual Routing and Forwarding)機能を備えたMPLSを採用。「MPLS/VRF」により、クラウド環境とのシームレスな接続を実現しつつ、ルーティングテーブルを分離してマルチテナントに対応できるようになりました。こうして、IPアドレスのバッティングが大きな問題にならず、膨大な量のACLを管理に成功しています。

<MPLS対応に採用したジュニパーネットワークスのネットワーク機器>
MX480 (3Dユニバーサルエッジルータ)
QFX5100(スイッチ)

【事例2】株式会社ビットアイル…ハイブリッド・マルチクラウドへのニーズに応える

<課題>

クラウドサービス「ビットアイルクラウド」を展開し、コロケーションからクラウドサービスまで、一貫したサポートで提供している株式会社ビットアイル。その課題となったのが、ユーザーが1 つのサービスのみを利用し続けるのではなく、それぞれのニーズに適したサービス選んで使う「マルチクラウド」を求めているということ。しかし、様々なパブリッククラウドやユーザーのオンプレミス環境などと相互接続するには、「確実に接続」できることや「障害が起きにくく安心できる」サービスを選ぶ必要が生じました。

<MPLSで解決へ>

確実な接続、安心して使えることを検討した結果、MPLSを用いてVPNを構成することに決定。様々な事業者やユーザーのオンプレミス環境を、MPLSを用いたVPNで接続し、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドのサービス提供を開始しました。そしてMPLS上で利用しているL3 VPNに加え、将来的にはL2 接続も検討。MPLSの採用からサービス拡大につながりました。

<MPLS対応に採用したジュニパーネットワークスのネットワーク機器>
MX480、MX80(3Dユニバーサルエッジルータ)

【事例3】株式会社愛媛CATV…IPとMPLSベースのバックボーン接続を確立

<課題>

松山市を中心にCATV施設を敷設し、多彩な専門番組と豊富な地域番組を提供している株式会社愛媛CATV。通信基盤の整備では、新技術を積極的に取り入れる社風があり、大学キャンパス向け公衆無線LANサービス提供もいち早く進めるなど、多様な取り組みをしています。またICT基盤の普及促進とインターネット需要の拡大に伴い、バックボーンのさらなる増強のための方法を検討していました。

<MPLSで解決へ>

そこで愛媛CATVでは、1台のルーターを仮想化しIPベースのバックボーン接続を行なうIPルーターと、MPLSベースのバックボーン接続を行なうMPLSルーターとして活用。IP用とMPLS用に2台のルーターを用意する必要がないので運用管理の負荷を軽減。1台のルーターの仮想化機能により、IPとMPLSのバックボーン接続に成功しました。

<MPLS対応に採用したジュニパーネットワークスのネットワーク機器>
MX240(3Dユニバーサルエッジルータ)

今回はMPLS導入による基本的なメリットと事例について紹介しました。MPLSはニーズに合った柔軟性と拡張性を備えたアーキテクチャを設計することができますが、その設計やネットワーク実装については多くのステップや支援が必要となることでしょう。下記では、その一助となる資料を用意していますので、ぜひご一読ください。また、ジュニパーネットワークス製品やMPLS構築に関する詳細情報を知りたい方はぜひ、ジュニパーネットワークス製品の豊富な導入実績を持つ日商エレクトロニクスまでお問合わせください。

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