
データセンターに求められる“スピード“と“流動性~来たるべき2016年を考えるセミナーレポート…データセンターの新潮流を読み解く~
2015年9月25日、東京都中央区八重洲にて「データセンターコンファレンス2015 Autumn」が開催されました。今、データセンターの役割や要件が大きく変わろうとしています。基調講演では、クラウドとデータセンターは相反するものではなく、補完し合える関係にある点など、多くの関係者の興味・関心が高い話題が提供され、満員の会場では参加者が興味深く耳を傾けていました。
このように、クラウドや仮想化などの技術が進みつつある中、今後のデータセンターサービス提供事業者はどうあるべきか――。このレポートでは、今回、当社マーケティング本部 第一マーケティング部 部長の細井 達夫が登壇しお話させていただいた「データセンターに求められる”スピード”と”流動性”」について、最新のネットワーク動向や最新のお客様事例を踏まえ紹介いたします。
目次
1.ユーザーファースト時代、データセンターも変革の時を迎えている
“スピード”と”流動性” がキーワード
IOT、スマートフォン、タブレットなどのモバイルデバイス、SNS――このようなキーワードに象徴される現代社会。クラウドファーストをさらに一歩推し進め、「ユーザーファースト」ともいうべき時代に差し掛かりつつあります。ユーザーにとって真に価値のある製品やサービスを提供する「ユーザーファースト時代」では、企業はますます競争力を高める必要があります。これはデータセンターも例外ではありません。データセンターを「ユーザーファースト」という切り口から考えた場合、必然的に重要となるのが”スピード”と”流動性”です。ここでいう”スピード”は、(1)判断のスピード、(2)実行/実装のスピード、(3)物理的なスピードの3種類があり、すべてを兼ね備えることが必要だと考えています。また、”流動性”とは、本来は金融用語ですが、データセンター利用者の情報資産の価値を高めていくということを意味しています。
今後のデータセンターに求められる、”スピード”と”流動性”がどのようなものなのか。次章から詳しく見ていきましょう。
2. “スピード”と”流動性” がデータセンターを変える
3種類の”スピード”…判断、実行/実装、機器のスピードとは?
まず、(1)判断のスピードですが、組織間連携による判断スピードなどが、その一例として挙げられます。サービス側とインフラ側、ネットワークエンジニア側とアプリケーションベンダ側…など、連携がうまくいかないと、判断スピードが上がりません。せっかく新しいプロジェクトを始めようとしても、『システム部門に聞いてみないと、できるかどうかわからない』というように、判断に時間がかかってしまい、ユーザーファースト時代に適応できないでしょう。
こうしたボトルネックを排除すること、判断の優先順位を明確にすること、リスクを予測しておくことなども、判断スピードを上げるために必要な要素です。
次に(2)実行/実装のスピードです。これは、顧客のビジネススタイルを考慮した上で、適切なシステムを実装できるスピードを指します。早さを重視するのか、金融機関のように品質を重視して時間をかけてシステムを作り上げるのか…など、それぞれの要望に合うインフラを実装できる準備をしているか、ということです。別の言葉で言うと、多様性に対応できる柔軟なインフラを持っているか、デザインできるかということでもあります。
最後が(3)機器のスピードです。これは、最新のテクノロジーを採用しているか、高いパフォーマンスを発揮できる機器かということです。ここで誤解してはいけないのが、高いパフォーマンスというのは、単に高速や大容量を指すものだけではありません。止まらないでアップデートできる安定性や信頼性、高い拡張性、操作ミスしにくいことなどもそれに当たります。人的要因によるミスは誰にでも起こりえます。そのようなミスを防ぐために、オペレーションが容易だったり、自動化されていたりする機器を選ぶことも重要なポイントです。
このように”スピード”を実現するには、プロジェクトとシステムが1:1で対応できるようなインフラのデザインが重要なポイントになります(下図参照)。1つひとつのプロジェクトがクローズな環境になっているので、ほかのプロジェクトに影響を与えずに、アジャイルな開発ができるようになるわけです。
“流動性”の高いプラットフォームが企業競争力を高める
次に、3種類の”スピード”とともに重要である “流動性”についてご説明します。本来、金融用語である”流動性”とは、『現金としていつでも使える度合』を指し、換金化しやすい資産(商品)を”流動性が高い資産”というように呼びます。
転じて、データ資産も”流動性”を高めることで、競争力が増すと考えています。ですからデータセンターの役割は、お客様が持っている情報資産が、運河を行き来するように、クラウドやオンプレミスを問わず、自在に情報が行き来できるハイブリッドなプラットフォームを用意することにあります。これにより、情報資産は”流動性”が高まり、その価値が高まるのです。
この”流動性”が高いプラットフォームを用意することは、具体的には下記の3つを網羅することが重要になります。
1つ目はユーザー視点で設計されていること。
2つ目が、オープンで連携しやすいこと。標準的なプロトコルを利用しているということ。
3つ目が、ギブアンドテイク…つまり、データセンターのインフラをユーザーが通ることに価値を見出すということ。
この3つになります。
具体的なイメージを紹介すると、オンプレミスの非仮想化環境と、クラウドの仮想化環境…その間を柔軟に情報が行き来できるような状態です(下図参照)。例えば、プロジェクト立ち上げの時にはクラウド、その後に長期的に見て安定運用できるのならばオンプレミスにする、といったような使い分けになります。先ほど述べた、プロジェクト単位で完結したインフラデザインと、この”流動性”の高いプラットフォーム双方が提供できる時に、ユーザーファーストが実現できます。
3.”スピード”と”流動性”を実現するために
“スピード”と”流動性”につながる、注目の技術トレンド
これまでデータセンターが”スピード”と”流動性”を実現する重要性を説明しましたが、ここからは、具体的にどのようにこれを実現するか、注目したい技術トレンドの簡単な説明と具体的な事例をご紹介いたします。
まず、注目したい技術トレンドは、『マルチテナンシー』です。プロジェクトごとにクローズ化された、シンプルにインフラをデザインできる技術が必要です。次に『L3データセンター』。これは、L2に縛られたシステムでは大規模なシステム構成ができませんので、L3を利用することでシンプルなネットワークが構築可能になります。また『クラウド間、データセンター間連携』も重要な視点です。先ほどの”流動性”とも関わる話ですが、オンプレミスとクラウドの使い分け・ハイブリッドなどが挙げられます。さらに、先ほども述べましたが、人的要因によるミスは誰にでも起こりえます。これを踏まえて『自動化』を進めて、ルーチンワークや人手作業を減らすこともポイントとなるでしょう。(下図参照)」
インフラデザインの成功事例…「2週間」の業務をわずか「1日」に短縮できた株式会社mixiの場合
このような新たな技術を取り入れ、大きな成果を上げた企業が株式会社mixi(以下、mixi)です。日本のSNSの草分けとも言うべき「mixi」の運営で知られ、現在も「新しい文化を創る」ことを目指して新たなサービスを次々世の中に送り出しています。ではこのmixiのデータセンターの例を見てみましょう。
mixiの事例では、結論から言うと、先述の3つの”スピード”と”流動性”を備えたことで、従来2週間かかっていたサービス立ち上げが、わずか1日に短縮することに成功しました。これは仮の計算ですが、年間50週・20サービス提供可能だったのが、年間300サービス提供可能…となるくらい、インパクトのある改善です。
では、データセンターの構成図とともにそのポイントを見てみましょう。
まず”スピード”実現に欠かせないマルチテナンシーという面では、それぞれプロジェクトごとにルーティングテーブルを導入していることが分かります。このような環境を用意することで、他プロジェクトとの調整、IPアドレスの重複など、部門間の調整を気にすることなく、”スピード”を重視してプロジェクトの進行ができるようになっています。
一方で”流動性”と言う部分では、外部クラウドサービスとの連携が挙げられます。立ち上げ、拡張などの不安もなく、柔軟にリソースを増減できるとともに、データも行き来しやすい環境が用意されています。
また、オペレーションミスが低減できるような仕組みを採用しています。ネットワークを構築する際に煩雑になりがちな設定をシンプルにするとともに、チェックポイントが少なくて済むようにインフラを設計。人的要因によるミスを低減することで、さらなるスピードアップにつなげることができています。
※ 本事例は、ジュニパーネットワークスのネットワーク機器を採用、日商エレクトロニクスがインフラのデザインを担当した事例をご紹介させていただきました。新たなデータセンターを担うネットワーク機器を提供しているジュニパーネットワークスの機器の”強み”を熟知していた日商エレクトロニクスがインテグレーションを行っていることで、効果を最大限に発揮した事例として考えています。
まとめ
これからのデータセンターに求められる”スピード”と”流動性”について概略を紹介しましたが、本記事のポイントをまとめると、次のようになります。
- クラウドファーストの時代から、ユーザーファーストの時代へ。
ユーザーファースト時代、企業経営にて競争力を高めるには”スピード”が重要。 - 下記の3種類の”スピード”を備えることで、ユーザーファーストが実現する。
- 判断のスピード
- 実行/実装のスピード
- 機器のスピード
- プロジェクトに連動する1対1のインフラデザインが”スピード”化につながる。
- データ(情報資産)の価値を高めるには、”流動性”の高いプラットフォームが必要。
また、これらの条件をクリアするためには、優れたネットワーク製品の選定ももちろん準用となってきます。その点で、Juniper Networks社の製品は、L3データセンターを実現するMPLS/VRFといった技術を長らく通信キャリアのバックボーンネットワークで培った信頼性の高いJunosOSで動きます。データセンター向けスイッチ機器としては、QFX5100、10000シリーズなど柔軟性に富みながらも優れたパフォーマンスを発揮する製品ラインナップをルータ、セキュリティ製品と共にトータルで提供しています。今後のデータセンターネットワークを検討する上で競争力をもった製品と言えるでしょう。
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データセンターコンファレンス2015 Autumn セッション資料ユーザーファーストの時代、企業経営の競争力を高めるにはスピードが重要と言われています。 多様化するユーザーのニーズをタイムリーに実現するために、DCに必要なものは何か?日商エレクトロニクスとジュニパーネットワークスが考える、これからのデータセンターに求められるスピードを実現する機能と役割を実際の事例を交えながら ご紹介いたします。
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