SRXシリーズ事例 株式会社インターネットイニシアティブ様

日商エレクトロニクスと共同で、Junos®SDKを利用した「早い」「簡単」「安心」がそろった新たなSMF対応サービスアダプターをつくることができました。

  • 企業名株式会社インターネットイニシアティブ
  • 設立1992年12月3日
  • 所在地東京都千代田区
  • 事業概要インターネット接続サービスおよびネットワーク関連サービスの提供、ネットワーク・システムの構築・運用保守、通信機器の開発および販売、ATM運営事業
  • 取材対象株式会社インターネットイニシアティブ
    SEIL事業部 事業推進部 部長 林 賢一郎 氏

株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)と日商エレクトロニクスは、Junos SDKを利用してジュニパーネットワークス(以下、ジュニパー)のSRXシリーズサービスゲートウェイ(以下、SRXシリーズ)に自動接続、完全管理などのマネージドサービスを効率よく運用するための独自技術である「SMF」の主要機能を実装。IIJが提供するマネージメントサービス基盤「Service AdaptorControl Manager(以下、SACM)」への対応を実現した。SRXシリーズを選択した理由、そして日商エレクトロニクスと共同で開発に取り組んだ経緯についてお話を伺った。

ネットワーク機器の設定から運用管理までを一元管理するSMF

SMF の概要をご紹介ください

SMFは、初期設定から設定変更、運用管理、保守までネットワーク機器をリモートでコントロールし、効率化するサービスです。これまで必要だった現地における面倒な機器設定や設置作業を簡素化し、短期間かつ低コストで、しかもミスなくネットワークの展開・運用を可能にします。

従来、SMFをご利用いただくためには当社が独自開発したルーターなどの利用が前提でしたが、他社のネットワーク機器でもSMFに対応できるよう「SMFv2」を開発し、さらにはSMFv2をOEM提供いただけるようマネジメントサービス基盤「SACM(エスエーシーエム)」の提供も開始しています。

SMFv2 を利用できるネットワーク機器の条件はありますか。

SMFv2の完全管理機能を利用可能な、組み込みモジュール「Libarms(リブアームス)」をネットワーク機器に組み込むことで、SMFによる管理が可能となります。

Junos SDKによって付加価値の高いネットワーク機器の提供が可能

ジュニパーのSRX シリーズにLibarms を実装した経緯を教えてください。

今回SMFv2対応のSRXシリーズを開発したのには、大きく三つの背景があります。

(1)統合型ネットワーク機器に対する要望

これまで当社が独自開発して提供してきたSMF対応機器は、特定の機能に特化したラインナップがメインでした。一方、ネットワークの構成をシンプルにするために、ルーティングだけでなく、ファイアウォールやVPN、NAT、UTM※などのセキュリティ関連機能を同一の筐体で利用できる統合型ネットワーク機器を利用したいというお客さまが増えてきました。ジュニパーはセキュリティに強く、このようなお客さまの要望に応えるためにSRXシリーズは最適な製品でした。

※UTM:SRXシリーズのUTM機能には、アンチウイルス、アンチスパム、Webフィルタリング、侵入検知防御機能が含まれます。

(2)より品質の高いネットワークの構築

ネットワークの機能、信頼性、セキュリティなどを向上させるために、導入実績が豊富で、より品質の高いネットワーク機器を利用したいという要望も多く寄せられるようになってきています。特に、統合型のネットワーク機器であれば、従来の機器以上の処理能力や信頼性が求められます。その点、通信事業者やサービスプロバイダーなどで豊富な実績を誇るJunos OSを実装したSRXシリーズは、実績、機能、信頼性、コストなど、あらゆる点でお客さまに満足いただける品質を提供できると考えました。

(3)Junos SDK による実装が可能

既存のネットワーク機器にLibarmsのようなライブラリを実装しようとすると、通常はファームウエアレベルでの開発・実装が必要です。そうなると、手間、時間、コストといったさまざまな問題をクリアしなければならず、実現が容易ではないのが現状です。一方、ジュニパーの場合はJunos SDKという開発環境が提供されているので、SMFv2機能を比較的容易に既存のジュニパー製品へ付加することができ、より付加価値の高い製品やソリューションを提供できると考えました。

Libarms+Junos SDKによりSRXシリーズに実装された主な機能

今回、SMFv2 対応の機能を実装した製品を教えてください。

「SRX210H」「SRX210B」「SRX240H」「SRX240B」の二機種四モデルです。

実際にはどのような機能を開発したのでしょうか。

「開発における機能的なポイントは次の図のとおりです。

開発期間はどのくらいでしたか。

仕様や要件をまとめる作業は別にして、実質的な開発期間は1カ月ほどでした。開発スケジュールは、膨大な評価項目がありましたが、当社メンバーと日商エレクトロニクスの協力体制によりほぼ予定どおりに進みました。

信頼できるパートナーとして日商エレクトロニクスを選択

開発パートナーとして日商エレクトロニクスを選択した経緯を教えてください。

SRXシリーズの開発プロジェクトを開始する前に、社内だけで別のジュニパー製品を用いてプロトタイプを制作しましたが、SMFv2サービスであるSACMに合致する製品を当社独自でつくり上げることは少なからず苦労もありました。その経験も踏まえ、やはりSRXシリーズをはじめとしたジュニパー製品およびJunos SDKに精通している開発パートナーと協業した方が、短期間に、品質が高い製品を開発できると考えました。

「日商エレクトロニクスと共同で開発したことで、品質や信頼性の高い製品を提供することができました。」
株式会社 ンターネットイニシアティブ 林 賢一郎 氏

しかしながら、Junos SDKがリリースされてから間もないこともあり、またネットワーク機器向けのSDKというのもこれまでなかったものなので、いざ開発パートナーを探そうとしたところ、国内外を問わず開発の実績があるところはほとんどありませんでした。

そのような状況下、Junos SDKのパートナープログラムに参加済みで、ジュニパーが実施している教育プログラムにエンジニアを派遣していることから、日商エレクトロニクスとのパートナーシップを検討することにしました。日商エレクトロニクスは、ジュニパー製品に精通しているだけでなく、豊富な取り扱い実績によりジュニパーへの技術エスカレーションパスもしっかりと確立されており、当社の強力なパートナーになってくれるだろうと考え、共同で開発を進めることにしました。

実際に共同で開発を行い、どのような感想をお持ちですか。

誠実で、技術力の高い会社だと思っていましたが、あらためてその思いを強くしました。例えば評価テストを行う際、とても細かく、繰り返しテストを行う姿を目の当たりにして、メーカーでもそこまではしないのではないかと思うこともありましたが、そのような姿勢が結果として品質や信頼性の高い製品を生み出す原動力となったと考えています。

日商エレクトロニクスへの期待

今後、ラインナップを拡張する予定などはありますでしょうか。

SRXシリーズでは、現在提供している二機種四モデル以外の製品でも展開できるように検討中です。また、SRXシリーズ以外のジュニパー製品で展開することも当社としては期待したいところです。しかし、やみくもにSMFv2対応製品を増やしていこうとは考えていません。既存の製品やお客さまの要望を見ながら、適材適所でラインナップを充実していければと考えています。

最後に、日商エレクトロニクスへの期待があればお聞かせください。

今回は、日商エレクトロニクスの「頑張り」には大いに助けられました。プロジェクトとしては、当然、うまくいったところ、うまくいかなかったところ、両方ありますので、それを踏まえて今後の協業関係に生かしていきたいと思います。

また、日商エレクトロニクスの提案力や技術力はとても高いと評価していますので、今後、他の製品や機種でSACMに対応する際にもぜひ協力をお願いできればと思います。

※記載の担当部署は、2011年9月の組織名です。